存在と意味―事的世界観の定礎 (第1巻)
広松 渉岩波書店
用語を厳選しているが、読者がすべての用語の意味を追従できるとは限らない。
印象で先に読み進んでもよいが、それで本質的な意味が何かはわからない。
デカルトのコギトエルゴスンを上回る内容であることは推測できるが、納得できるわけではない。
現代科学にもとづく形而上学―今日、神の実在の問題はいかに提出されるか
クロード トレスモンタン水声社
①現代科学(とくに天文・物理学,生物学)のなかでも,さまざまな学説間に 同意が成立する事実を確定したうえで
②そうした科学が明らかにする事実は,形而上学固有の考察の必要性をいささ かも否定するどころか,むしろ喚起するものであることを示し
③キリスト教に否定的な科学者たちの考察のなかに忍び込まされている形而上 学的な意見を剔抉して,その描写がいかに精密をきわめようとも,それは古 代ギリシアの哲学者たちが選んだいくつかのパターンの存在論に行きつくこ とを明らかにし
④それが彼等自身が明らかにした科学的諸事実に照らして,キリスト教の存在 論と比較して,いかに説得力がないかを示すとともに
⑤科学に忍び込まされた唯物論的無神論や観念論的無神論に抗がして,キリス ト教的な形而上学を再構築するにあたって,アリストテレスの形而上学がも っともみこみがることを,実地に使ってみせることにより主張すること,等である。
さまざまな現代宇宙論に忍び込まされた形而上学をえぐり出し,その現代的な衣装をはぎとってタレス,アナクシマンドロス,パルメニデス,デモクリトスなどの学説との根本的な同一性を示す手際はあざやかだし,アリストテレス哲学がいまなお有効であることを,実際に使って見せながら示すあたりは,古典哲学のファンにとって,読んでいて楽しいしうれしい。
気になるのは,かれが「神」を〈創造主〉としての側面を強調して理解しているかのようにも読めるところで,ユダヤ・キリスト教の神の名が「有りて在るもの」であって「創造するもの」ではないことは確認しながら読んだ方がよさそうな気がした。そのほか,アリストテレスの形而上学が存在論であるよりも本質論であることが,ほとんど触れられていないのも気になる。とはいえ,最近読んだ哲学書のなかではきわめて面白く有益な本だった(あくまで素人の感想です)。
小さな名著,エチエンヌ・ジルソンの『神と哲学』と合わせて読むと,とても有益だと思う。